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穏やかな画風が主流だった戦前の漫画だが、時代は軍国主義色が強まり、次第に軍の広告的な役割を果たすことになる。 漫画家の本意ではないにしろ、少年漫画までもが軍に利用されてしまった。 漫画にとっては暗い時代だったといえるだろう。 戦後になると、手塚治虫の登場と彼に刺激を受けた漫画家たちが、新たに創刊された子ども漫画雑誌で活躍していくことになる。 ※この記事は、とんぼスタジオ代表高橋が20年前に漫画制作事務所を立ち上げたころに書いた記事です。 ほぼそのままの内容で掲載してあります。 |
6 子ども漫画 |
●山川惣治 山川惣治の「少年王者」がよかった。 手塚治虫の「新宝島」と同じ年に発表された。 「少年王者」は、当初紙芝居として描いたものらしい。 それが、焼け跡で遊ぶ子どもたちに圧倒的に支持され、昭和22年からは単行本として出版された。 第9巻まで出版された。 |
「少年王者」の舞台はアフリカ大陸だった。 当時としては遥か遠くの、未知の世界の出来事を漫画化したのである。 私たち子どもにとって夢のようであった。 現代であれば、テレビや雑誌などでアフリカについてほとんどの人が知っている。 ところが、当時は、まったくといってよいほどアフリカについて知らなかった。 だから、新鮮で驚きも大きかったのである。 主人公の牧村真吾の、雑草のような強靱さと正義感がよかった。 |
もっとよかったのは、山川惣治の描く挿絵だった。 ペン画風で、リアルで、漫画というより絵画を見ているような感じだった。 彼の「少年ケニヤ」も、同様に好きだった。 文章よりも絵を見ているだけで感心させられ、満足させられたものである。 |
●福井英一 福井英一の「イガグリくん」もよかった。 柔道着姿のイガグリ頭が、今でもはっきりと覚えている。 ただ、どうして頭に針金が刺さったように描いたのだろう。 坊主頭ならわかるが、「イガグリ」といっても、クリのイガグリのような頭って、本当にあるのだろうか…。 まぁ、漫画ネらそれくらい許されるかな。 漫画の読者って寛容だから、たいていのことは許しちゃうんですよね。 ははは…。 |
戦後まもなく、月刊誌の創刊ラッシュがやってくる。 すでに戦前から発行されていた「少年倶楽部」は「少年クラブ」と改名され、光文社からは「少年」と「少女」がュ刊された。 さらに、学童社からは「漫画少年」が、集英社からは「おもしろブック」が、秋田書店からは「少年少女冒険王」が発刊された。 30年代になると、「ぼくら」や「なかよし」「りぼん」が発刊された。 昭和34年には「週刊少年マガジン」(講談社)と「週刊少年サンデー」(小学館)が発刊された。 |
●川内康範 川内康範は多くの名作を残している。 彼は原作者である。 「月光仮面」だけでなく「七色仮面」「アラーの使者」「レインボーマン」など、私の子ども時代には誰もが知っている漫画だ。 そういえば、「月光仮面」がテレビ放映されたときの主題歌もよく覚えている。 「…誰もがみんな知ってい〜る〜月光仮面のおじさんは~」と、歌詞のとおり誰もが知っていた。 |
そういえば、「月光仮面」もそうだけど、川内康範の描く主人公って、だいたい顔を隠している。 正義の味方は、他人に正体を知られないことが美徳と考えたのかもしれない。 |
それにしても、カッコよかった。デザインもすごく良かったと思う。 「月光仮面」はマントをなびかせ、バイクに乗って2挺拳銃をぶっぱなす。 しかも、額の3日月マークが粋だった。 そういえば、額の3日月マートは、歌舞伎や映画で有名な時代劇「旗本退屈男」がいる。 彼の名セリフ、「天下ご免の向こう傷」も有名だ。 おそらく、意識して作ったのだろう。 「レインボーマン」のデザインは、ちょっと「月光仮面」と「アラーの使者」に似ている。 |
ところで、川内康範のすごいところは、作詞までやってしまうことだ。 主題歌を作詞し、有名な森進一の「おふくろさん」まで作詞したのだからスゴイ。 たしか、日活映画「東京流れ者」も、原作や脚本は川内康範だった。 監督は鈴木清順で主役が渡哲也だった。 川内康範って本当にスゴイ人だったと思う。 |
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参考ページ→ 日本漫画の歴史 北斎漫画について 漫画の描き方講座 |
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